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普段の彼は、お洒落とはとんとご縁の無いタイプの人間でした。いつも同じようなシャツとジーパン。典型的な理系男子の風貌をした男性でしたが、ある日そんな彼からフワッととてもいい香りが漂ってきました。 「何かつけてるの?」 と聞くと、どうやら生まれて初めて香水を付けたとのことです。 きっかけは私が言った一言。通りすがりの誰かから香ってきた香水の香りを、色っぽい香りだよね、と褒めたことだそうです。 こっそりデパートに行って、化粧品カウンターの店員さんに選んでもらった香りだとか、ほんのりフルーツのような爽やかだけど、大人っぽいとても素敵な香りを纏っていました。背伸びしていない、初心者でも違和感の無い、彼の服装でも浮かないそんな香りをお店の人は上手く勧めてくれたのだと感心しました。 「素敵な香りだね。ドキドキしそう」 と伝えると、ちょっと照れたように所在無げにしながら、喜んでくれました。 普段から香水をつけ馴れている男性にはそうは思いませんが、普段はお洒落に無頓着な彼から漂う香水の香りはちょっと色っぽく感じるものだと、改めて思いました。